この記事では「ジャズで使いやすいオススメのドラムスティック」をお送りします。
- ジャズで使われるスティックの特徴
- オススメのスティック
ジャズで使われるスティックの特徴
ジャズドラミングにおいてドラムスティックの選択は重要です。
- 音楽の音色
- アーティキュレーション
- タッチ
などに直接影響を与え、特にシンバルレガートの音色はスティック一つでガラリと変わります。
ロックやポップスで使用される太い音が出しやすいスティックとは異なり、ジャズのドラムスティックは以下が求められる傾向にあります。
- 軽量(40〜50g)
- 反応性
- 繊細なシンバル音が出せる
ジャズのスティックの細かな特性を探ってみましょう。
1. 重量とバランス
ジャズで使われるドラムスティックは40〜50gと比較的軽量です。(ロックでは40g後半〜50g台)
これにより複雑なパターンや繊細なアクセントがしやすくなり、機敏さとスピードが向上します。
しかしパワーも出しやすくするために、重たいスティックを使っているドラマーもいます。それにはバランスポイントをコントロールすることが必須となります。
2. チップの影響
チップの形状はシンバルの音色に大きく影響を与えます。
形状は比較的小さめが好まれる傾向にあります。
これにより、繊細なライドシンバルのアーティキュレーション、クリスプなスネアドラムのアクセントが可能になります。
演奏する会場の広さによっては粒立ちをさらに際立たせえて、パワーが出るスティックを選ぶ場合もあります。
チップの種類
- 円錐型
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- ティアドロップより更に接着面積を増え、より豊かにシンバルを鳴らす事が出来る
- 細いスティックでも太鼓の低音を出しやすい
- 他と比べるとリバウンドは得られづらい
- コントロール次第で様々な編成で使える
- ボール型
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- 均一でクリアな音色を奏でやすい
- リバウンドも得られやすい
- ちょうど良い音量で安定して音が出せる
- ティアドロップ型
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- 接着面積が多いので、シンバルが良く鳴り、低音が出やすい
- 当てる角度によってはボール型の様な粒ダチのよい音を出せる
- バランスの良いチップの形状
3. 長さと直径
ジャズのドラムスティックは一般的に他のジャンルで使用されるスティックよりもわずかに細い傾向があります。
これにより、制御を犠牲にすることなく、より機敏性と繊細さが向上し迅速で複雑なスティックワークを可能とします。
長さはロック、ポップスで使われる物と大きな変化はなく、約406mmほどが基本です。
取り回しのしやすさを踏まえて、遠心力をより利用する観点から、最近では長めのスティックも出てきています。
4. 材質
ジャズのドラムスティックは柔らかい音色を重視することから特にヒッコリー、メイプルが好まれます。
- ヒッコリーはバランスの良さから他ジャンルでもシェアが多いように、ジャズでもよく使われています。
- メイプルは柔らかい打感と独特のコツコツとしたクリアな音色で好んで使うプレーヤーも多いです。
- オークは重量があり、音色が固めなのであまり多くはみません。
しかしパワーがあるので、あえてそのパワーを最小限に使って効率的な演奏をしているドラマーもいます。
代表的なメーカーとモデル
代表的なメーカーとオススメのモデルをご紹介します。
同じマテリアルでもメーカーによって以下の要素が異なります。
- 木の密度、乾燥具合
- 質感
- 加工・選定 技術
それぞれの特徴を見てみましょう。
Vic Firth
世界シェア率No.1のVic Firthは正確なペアリングが特徴的です。
木材は密度が高く、しっかりとした選定が伺えます。細部の加工にも余念がなく、ささくれや歪みなどの粗が非常に少ないです。さらには豊富なバリエーションの中から選べるのも嬉しい点です。
- American Jazz Series
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小さめのティアドロップ(涙)型チップの採用と、ネック部から長めのテーパー形状とすることで、心地よいリバウンド感とダークなシンバルサウンドが得られるモデル。
1〜6までのサイズがあり、番号が大きくなるほど小振りになってきます。(チップ形状は同じ)
豊富なサイズから選べるので、初めてジャズをやる方にオススメです! - SD4 Combo
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スクエア型のチップが特徴的なモデル。シンバルがコツコツと鳴ってくれます。
メイプルで軽量、かつ少し短めでもあるので、コントロール性は十分です。Eric Harlandも愛用しています。
【14×404mm】 - SD2 Bolero
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16.1と太いグリップとは正反対に小さいボール状のチップが特徴的なスティック。
太さに対してバランスが良く、コントロールもしやすいです。
メイプルが引き出すシンバルの音色は素晴らしく、太いグリップの効果でリムショットも気持ちよく決まります。
Brian Bladeが長く愛用しているのも有名です。
【16.1×401mm】 - VIC-85A
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5Aを少し細くしたモデル。5Aよりも繊細な音が欲しい、軽やかさが欲しい方にオススメです。
Mark Guilianaも愛用しています。
【13.9x406mm】 - Modern Jazz Concept series
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アーティストの協力を得て登場した、VIC FIRTH提案のジャズスティック。※現在廃盤
- MJC1
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ライドシンバルのサウンドを意識し、直径を太めに設計したモデル。チップが大きく、明瞭な粒立ちが得られます。
- MJC2
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VIC-5Aより細めのタイプで、レスポンスの良さと軽いフィーリング、ロングテーパーを採用したモデル。
チップの形状はオールドスタイルのジャズを連想させます。 - MJC3
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MJC1を長く、細くした様なモデル。より遠心力を使ったプレイに。
- MJC4
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Combo SD4を長く、太くした様なモデル。Combo SD4よりもっとパワーが欲しいと思った方にオススメ。
- MJC5
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8Dシャフト、ミディアムテーパー仕様のバランスのいいモデル。コントロールがしやすく、シリーズの中では一番使い勝手が良いです。
ナイロンチップでクリアなシンバルサウンドが得られます。
- Peter Erskine Model / VIC-PE
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繊細なシンバルサウンドが得られるチップ形状です。いくつか種類が出ており、ビッグバンド用のもあります。
【13.3×406mm】 - Steve Gadd Model / VIC-SG
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オーソドックスに見えて、独特な重心としっかりとした粒立ちが得られます。
ナイロンとナチュラル仕上げモデルもあり、ガッドフリーク以外でも愛用者を見かけます。
【14×400mm】 - Nate Smith Model / VIC-SNS
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細身でありながら、前に重心があるので意外とパワーが乗りやすいです。
細めのグリップとボール型のチップでクリスプなサウンドが得られます。
【13.6×407mm】 - Jack Dejohenette Model / VIC-JD
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5Aを長くしたようなモデル。
バランスが良く、長さの割にはとてもコントロールしやすいです。ラッカー塗装も手に馴染みやすいです。
【14.4×414mm】 - Dave Weckl Model / VIC-DW
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バランスが良くコントロールしやすいモデルです。長めの通常モデルと、5Aに近いEvolutionモデルがあります。
【14×413mm】 - Buddy Rich Model / VIC-BR
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太めのグリップと長めのモデルですが、一番の特徴は独特なチップです。
コントロールが難しく感じますが、パワフルな音から意外と繊細な音まで出せる面白いモデルです。本人のプレイスタイルからビッグバンドに向いています。
【15.0×414mm】
Zildjian
シンバル製造で知られるZildjianですが、その精密旋盤と切削工具はスティックでも生かされています。
耐久性と感触を向上させるための独自の仕上げ技術を採用しており、優れたパフォーマンスと長寿命を提供しています。
昨今の材料費高騰により、残念ながら多くのモデルが廃盤となってしまいましたが…素晴らしい名作モデルを残しています。もし見つけたらゲットすることがオススメです。
- John Riley Model
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標準的な5Aを少し長くし、チップはさらにシャープにしたモデル。
バランスはチップよりで程よい重さが明確なシンバルレガートを生み出せます。
【406mm x 14mm】 - Dennis Chambers Model
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チップは小さなボール型で、タイトなサウンドが出せます。
標準的な長さと太さでバランスが良いモデルです。
【406 x 14mm】 - Tony Williams Model (廃番)
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グリップ径が16.5mmとかなり太めのモデル。
後期のトニーは大音量を求めていた事もあったのか、パワーが出しやすいです。
【402 x 16.5mm】 - Antonio Sanchez Model(廃番)
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やや長めに作られており、バランスは前側。
かつバレルチップによってパワフルかつタイトなサウンドが出せます。
【413x14mm】 - Bill Stewart Model (廃番)
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細めのグリップとネックがリバウンドを引き出しているモデル。
その取り回しの良さから、日本でも愛好家が多いです。惜しくも廃番…
【403 x 12.7mm】 - Roy Haynes Model (廃番)
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標準的なサイズでありながら、長めのテーパーで取り回しが良いモデル。
クリアなレガート音が得られるティアドロップのチップも評価が高いです。
Bill Stewart Modelと同じく、こちらも日本で愛好家が多いです。今ではAmazonで¥10,000以上の値が…
【403 x 14mm】 - Terri Lyne Carrington Model (廃番)
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若干細めのグリップとザラついた表面が特徴のモデル。
オールジャンル苦なく叩けるバランスの良さを持っています。
【406 x 13.5mm】
Vater
伝統的な職人技術と最新のテクノロジーを組み合わせているVaterのスティックはジャズ向けに作られたとされるモデルも多くあり、多くのドラマーに愛用されています。
直角に近いスティックエンドの加工がされており、独特の遠心力が感じられるのも特徴的です。
Vic Firthより品質にばらつきがありますが、素直な反応とカラッとした木材の密度はVaterでしか味わえないタッチがあります。
- Manhattan 7A
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チップがボール状・ナイロン(ティアドロップ)と3種類あるモデルです。
最近はモデルチェンジし、テーパーのかかり具合が前側になりました。
細めですが、バランスが良く愛用者も良く見ます。
特にナイロンモデルはナイロンらしからぬ柔らかいサウンドを出せます。Kendrick Scottも愛用。
【406×13.5mm】- ボール型
- ナイロン型
- Teardrop
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チップの形がそのままモデル名になっており、メイプルの素材と合わさって美しいレガートが打ち出せます。
バランスも手前すぎず前すぎずコントロールがしやすいです。Jonathan Blakeも愛用。
【406×14.5mm】 - Sweet Ride
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小型のボールチップと細めのグリップから粒立ちが良く、繊細なサウンドが出せるモデル。
重心が少し前にあるのである程度のパワーも実は出せます。Chris Daveも愛用。
【13.5 x 406mm】 - Jazz Ride
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名前の通りJazzに適したモデル。グリップ径は少し太め。
チップは小さくとも打面がボール型より「面」で当たり、シンバルを豊に鳴らします。
【14.6 x 406mm】 - Super Jazz
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サイズが長めで遠心力がかかりやすいモデルです。
バランスポイントを変える事で様々なダイナミクスが出せます。メイプルとヒッコリーモデルがあります。
【14.1 x 413mm】 - 52nd St.Jazz※販売停止中
- Vinnie Colaiuta Model
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太めでパワーが出しやすいモデル。どちらかと言えばフュージョン向きですが、バランスの良さからオールラウンドに使えます。流石ドラマー界の神モデル。
【15.0mm×404.8mm】
Promark
Vic Firthと同等のスティックペアリングを行っているのがプロマークです。
新しいマテリアルの採用や、耐久性の高い加工方法など新製品の開発にも余念がありません。
またドラマーが個々の好みや要件に応じてスティックをカスタマイズできる幅広いオプションを提供しています。
所謂”ジャズドラマー”のシグネチャーは少ないですが、Mike Portonoy,Marco Minneman,Simon Philipps,Anika Nielsなどテクニカル系のドラマーが好んで使っています。
- Elvin Jones Model
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細めで重心が前側にあるモデル。Vaterの52nd St.Jazzにキャラクターが似ていますが、こちらの方が細め。
Elvin本人がこのスティックであのパワフルな演奏をしていたかと思うと驚きです。
【13 x 406mm】 - Carter Mclean Model
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チップがテーパーと一体になった様ななんとも不思議なデザインのモデル。
チップが欠けて使い込んだスティックの様な特殊なルックスですが、角度によって繊細にもパワフルにもできる万能さがあります。
【409.6 x 14.5mm】 - Horacio “El” Negro Helnandez Model
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12.7mmと細めでセンターに重心のあるモデル。小さめのラウンド・チップで、繊細かつ明るくクリアーなサウンドが得られるスティックです。
Antonio Sanchezと同じくラテン系のドラマーは細めのスティックを好む傾向がある様に思えます。
【406 x 12.7mm】
YAMAHA
様々な分野に置いて大手であるYAMAHAですが、コンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアを使用して正確なスティックプロファイルと寸法を作成し、最適なバランスと重量配分を実現しています。
種類は少ないですが、クオリティの高いモデルを販売しています。
- 大坂昌彦 モデル
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Vic FirthのSD2 Boleroを若干小さくした様なモデル。
Boleroだとちょっと大きい!と思った方はジャストフィットするはずです。
取り回しがよく、繊細なレガートが出せます。PLAYWOOD M-15Cとも似ています。
【400 x 15 mm】 - ジョージ大塚 モデル
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トニー・ウィリアムスモデルの様な16mmと太めでパワーが出せるモデル。
しかし、若干短めの長さなので、バランスも考慮されています。
【400 x 16 mm】
Innovative Percussion
最近になって日本での認知が高くなってきたアメリカ、ナッシュビル初のメーカーです。
元々Percussion用のスティックを製造していましたが、ドラムセットスティックにも力を入れています。
VicFirthと比べて正確性ではやや劣るものの、高い加工技術を持っています。
痒いところに手が届くような絶妙なバランスのスティックはじわじわとファンを増やしています。
アーティストモデルはよく練られたモノが多く、これからも期待のメーカーです。
- Legacy 7A
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各メーカーの7Aより若干長めのモデル。ナイロンチップのモデルもあり。
適度なしなりとティアドロップ型のチップで操作性とサウンドのバランスが良いです。
【13.5mm×409mm】 - Big Band
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PromarkのElvin Jones、Vaterの52nd St.に太さを足した様なモデル。
太さによってパワーがさらに出しやすくなりました。
【13.9mm×408mm】 - Jeff Hamilton Model
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今は無きRegalからもシグネチャーを出していたJeff Hamiltonのモデルです。
形はほとんど変わる事なく、鉛筆の様に尖ったチップは角度によるタッチのコントロールを可能としています。
【12.7mmx403mm】 - Marcus Gilmore Model (廃番)
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リバースティアドロップと名付けられた通常のティアドロップを逆にした様なチップ形状は、クリアな粒立ちがありながらも、シンバルを良く鳴らしてくれる不思議な打感。
祖父ロイ・ヘインズのスティックを思わせるロングテーパーを採用しており、中間ほどのバランスはコントロール性にも繋がっています。MarcusがVic Firthに移籍した事で惜しくも廃番に…
【13.9×409mm】
まとめ
定番のモデルとシグネチャーモデルをご紹介しましたが、人それぞれ手のサイズや身体の使い方も異なります。
また一般的にはロックで使う様なスティックをジャズで使っているドラマーもいます。(Vic Firth 5Bなど)
求めるサウンド、身体の使い方等で選択肢は異なってきます。
まだご紹介仕切れなかったスティックはありますが、少しでもスティック選びの参考になれば嬉しいです!