今回は「ジャズドラムのコンピングの種類」をご紹介します。
ジャズドラムのコンピングの自由度、可能性は無数にあり、メロディ、アンサンブルによって流動的になるので完全に定義することは難しいです。
しかし、傾向を知ることでアプローチの仕方がわかってくるはずです!
そもそもコンピングって?
言葉の意味
ジャズの発祥アメリカではコンピングと言われる事が多いですが、日本では伴奏,バッキングとも言われます。
コンピング(Comping)の由来は以下から来ています。
- Accompany(付き添う,ついて回る;同行する)の名詞
- Accompaniment(付属物、つきもの、添えもの、伴奏、伴奏部)
バッキング(Backing)はメロディに隠れる感じですが、コンピングの方が一緒にプレイしている感じがありますよね。
合いの手 or 合わせ
ジャズではシンバルレガートをキープしながら左手スネア、バスドラを合いの手 or 合わせとして入れていきます。
「スウィングジャズ」からプレイされ始め、「ビバップ」で発展していったスタイルです。
メロディに対してのアプローチの仕方は大きく2種類に分かれます。
- 合いの手 = コンピング
- 合わせ = ユニゾン
右手のシンバルレガート + 左足2、4をキープしながら、左手スネア、右足バスドラをコントロールするので、ある程度のインディペンデンス能力が必要です。
モダンになってくる程、どの楽器でコンピングするかは自由になって行きます。
より自由になると、ドラムセット全体のコーディネーションは複雑になる傾向があります。
コールアンドレスポンス
テーマ、ソロなどメロディと発展する事がコンピングの面白さです。
会話によく例えられますね。例えば…
A)最近さ、超いい感じのライドシンバルを手に入れたんだよね!
B)良いね!今度聴かせてせてくれる?
A)もちろん!とても温かみのある音で、弾き心地も最高だよ!
B)自分も最近シンバル探してるんだよね〜。新しいシンバル、いつ聴きに行ってもいいかな?
A)この後空いてるから、よかったらどう?
B)是非いくよ!
二人ともお互いの話に耳を傾け、興味を持ちながら会話をしていますね。
しかし、以下の様になったらどうでしょう…?
A) 最近さ、超いい感じのライドシンバルを手に入れたんだよね!
B)良いね。
A)とても温かみのある音で、弾き心地も最高だよ。
B)ふーん。
A)まあ、ちょっと教えてあげようと思って。じゃあね。
〜完〜
もし彼らが音楽的な会話をしていると想像してみましょう。
最初のAはソリスト、Bはドラマーです。果たしてどちらが音楽をより楽しめるでしょうか?
※The Art of Bop Drummingより抜粋
ジャズドラミングではメロディとの関係性、演奏者との対話がポイントです。
テーマにアプローチ
ジャズでは曲の主旋律「テーマ/Theme」と「ハーモニー」がありそれらを元としてアドリブが演奏されます。
テーマメロディはアドリブソロより予測がしやすいので、フレーズも定まりやすいです。
メロディ楽器とは別にされがちなドラマーですが、テーマ&ハーモニーを知っている、身体に馴染ませることで曲へのアプローチは異なります。
ドラマーこそ完璧にテーマを把握しましょう…!
- テーマを歌いながらコンピングを叩く
- 歌うことでテーマのテンポ感がわかる
- テーマのメロディを叩く
- テーマを他楽器で弾いてみる
- コードを弾いてハーモニーを確認する
- 歌詞も覚えられると更によし…!
ソロにアプローチ
アドリブソロではテーマメロディより予測がつき難いです。
その為、あらゆる可能性を考慮した練習、音楽力が求められます。
- テーマを把握する事が必須
- ハーモニーの理解で曲の流れを更に染み込ませる
- 小節を大きく捉えて聴く
- ソリストがどのように演奏したいかを聴く
- ソリストになった気持ちでソロを聴く
- 隙間を見つけるのが効果的に聞こえやすい…がただ埋めるだけになりやすい
音符のタイミングによる効果
ジャズドラムのコンピングは初めは好きなように、テキト〜に叩いているように聴こえるかもしれません。
しかし音符の場所によって得られる効果が変わります。それぞれの違いを見てみましょう!
裏拍
裏拍はスウィングのリズムに馴染みやすく、何処においても事故は少ないです。
しかし、強拍、弱拍に置くかで印象が変わります。
1,3拍裏
- メロディの合間に入れやすい
- メロディに対して呼応しやすい
- 徐々にテンションを上げていく感じ
2,4拍裏
- 1,3拍裏より進行感がある
- 段落やコーラスの代わり目で変化を促しやすい
- やりすぎるとソリストにとっては焦らされる気持ちになる
表拍
2,4拍
- 安定感がありながら進行感がある
- 大きく飛ばす感じ
- ペダル的な効果
- やりすぎると重くなる
1,3拍
- 単体で使うことは少ない
- 重たさを出したい時に
- 単体で使うと重いので、裏拍と組み合わせる事が多い
表裏の組み合わせ(2Hit)
一打増えるのみでもコンピングの印象は変わります。
- 1,3拍裏
-
2,4拍で終わる為、次へ流れやすい
- 2,4拍裏
-
1,3拍で終わる為、安定感がでやすい
- 1,3拍
-
1,3拍 スタートの為、安定感がでやすい
- 2,4拍
-
2,4拍 スタートの為、次へ流れやすい
3連符で埋める
3連符で間を埋めるのはモダンになってくる程、聴かれます。
ただ埋めるだけでは煩わしくなりがちなので、フレーズの終わりを定めて使うとより効果的です!
- スピード感が増す
- ダブルストロークは必須
- フィル的に使える
- バスドラムとも組み合わせやすい
2拍3連
2拍3連はアフロ的な要素があり、スウィングの理解にも欠かせないです。
是非プレイに取り入れてみましょう!
- 表からスタートすると安定感がありながら裏へ飛ばす
- 裏からスタートするとシンコペーション感は強くなる
- 表と裏スタートでやれば3連の入る場所を網羅できる
- 6/8 アフロへのつながりになる
- メトリックモジュレーションへの足掛かりに
ヘミオラ
ヘミオラとはギリシャ語で 1.5 もしくは 2:3 を意味します。
3拍子の2小節を2拍子の3小節のように読み替えて演奏するなど、元はバロック音楽で用いられていました。
ヘミオラにより小節を細分化すると以下のような効果が生まれます。
- 小節を大きく割っていく
- 大きくシンコペーションする形
- 拍を大きく捉える
- フレーズの終わりに向かって叩くと大きな進行感が生まれる
- ポリリズム的アプローチへの足掛かりに
- トリッキーになりすぎると浮く
更なるコンピングの種類
コンピングの「合いの手」「合わせ」から更に種類を分けてみてみましょう。
隙間を埋める・間を繋ぐ
- フレーズの切れ目にプレイする
- 間を補って次に行きやすくするよう促す
- フィルイン的に捉えられる
- スペースにプレイする
プッシュ
- ソロのフレーズの終わりに向かって押し出す
- 段の変わり(例:Aメロ → Bメロなど)に向かって押し出す
- ソリストが盛り上げていくのではなく、ドラマーが起爆剤となる
ユニゾン
- ユニゾンしてメロディを更に強調する
- 一体感が出る
- 循環、ブルース、ハードバップ系はテーマがリズミカルなのでユニゾンする場合もある
- やりすぎるとダサくなる
- ソロでも定番フレーズはキャッチできる場合がある
対旋律
対戦率とは主旋律に対して独立した形で示され、主旋律を効果的に補う形の別のメロディのことを表します。
カウンターメロディやオブリガートとも言われます。
- ソロの後追いではなく、ドラマーもコンピングでソロをする
- 一貫性が生まれやすい
- より主体的になれる
- 相対的に音楽の幅が広がる
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ドラムソロばかりに目が行きがちですが、ドラマーは曲中は殆どコンピングをしているもの。
曲全体を通して色付けしていくのは「作曲」している感覚に近いです。故にドラムソロよりコンピングの方が難しいともされています。
ですのでお気に入りのドラマーのコンピングをコピーする事もオススメです!
コンピングは無限にあり、組み合わせによって如何様にも変化します。数ある中でも少しでも傾向が整理されれば嬉しいです!